『バック・トゥ・ザ・フューチャー』3部作は、タイムトラベルという斬新なアイデアで過去や未来を駆け巡り、全世界を熱狂させたSF映画の金字塔です。PART1が公開されたのは約40年前。それでもなお、世代を超えて世界中で愛され続けています。
本記事では、この不朽の名作をさらに楽しむために、シリーズのあらすじや制作秘話、劇中に散りばめられたトリビアの数々を徹底解説。知れば知るほど面白さが増す『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の魅力を余すことなくお届けします。ぜひ作品を鑑賞しながら、この特集をお楽しみください!
『バックトゥザフューチャー』(1985)

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あらすじ
1985年、カリフォルニア州ヒル・バレーの静かな町で、マーティ・マクフライは平凡ながらも刺激的な日々を送っていました。気の弱い父ジョージと酒に溺れる母ロレインの間で育った彼は、スケートボードやロックンロール、そしてガールフレンドのジェニファーと過ごす時間を愛する普通の高校生。しかし、そんな彼の日常はある夜、親友であり天才発明家のエメット・ブラウン博士(通称ドク)とのタイムトラベル実験をきっかけに一変します。
ドクが改造した伝説の車“デロリアン”を使ったタイムトラベル実験が始まるはずだった深夜の駐車場で、事態は急変。実験に必要なプルトニウムをドクから騙し取られたことに激怒したリビア人たちが現れ、ドクは銃撃されてしまいます。混乱の中、マーティは思わずデロリアンに乗り込み、時空を超えて1955年のヒル・バレーへとタイムスリップ!
しかし、その時代に閉じ込められてしまった彼は、戻るための燃料がなく絶望的な状況に。唯一の頼みの綱として、30年前の若きドクを探し出しますが、事態はさらに混迷を極めます。偶然にも彼の父ジョージを助けたことで、本来両親が恋に落ちるはずの運命が狂い、代わりに若き日の母ロレインがマーティに恋してしまうのです。
両親が結ばれなければ自分の存在すら消えてしまう—そんな危機的状況の中、いじめっ子のビフが立ちはだかる中で、マーティは1985年に戻る方法を探しながら、両親の愛の再結成に奔走していきます。
時間と運命が交錯する壮大な冒険の幕が上がり、人類初のタイムトラベルが描く物語は、笑いと感動、そして心躍る展開で観る者を魅了していきます。
魅力
“タイム・トラベル”という壮大なテーマを掲げた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は、1985年7月の公開と同時に全米で熱狂的な支持を集めました。斬新なストーリーとユニークなキャラクター、そしてデロリアンを象徴としたタイムマシンのアイデアが観客を魅了し、瞬く間に社会現象へと発展。その年の米国内興行収入では、エディ・マーフィ主演の『ビバリーヒルズ・コップ』やシルベスター・スタローン主演の『ランボー/怒りの脱出』といった強力なライバル作品を抑え、堂々のトップを記録しました。
この驚異的な成功は、「フューチャー現象」と呼ばれる一大ムーブメントを巻き起こし、映画史に燦然と輝く金字塔としてその名を刻むことに。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』は単なるエンターテインメントを超え、時代を超えて語り継がれる文化的アイコンとなったのです。
脚本家・プロデューサーのボブ・ゲイルが帰郷中に思いついたアイデアを、これまで2度タッグを組んでいたゼメキスに相談したことがきっかけで生まれた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』。中でも注目を集めたのが、ガルウィングドアが特徴的なタイムマシン「デロリアン」。この車はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)のアトラクションとしても親しまれ、展示されたレプリカは約460万円で落札され、その収益はパーキンソン病の研究助成に寄付されました。
本作では、タイムトラベルを通じて1950〜1980年代のアメリカ文化を鮮やかに描写。例えば、マーティが1955年でチャック・ベリーの「Johnny B. Goode」を披露し、まだ普及していなかったロックンロールを響かせるシーンは象徴的。また、パンツに書かれた「カルバン・クライン」を名前と勘違いしたロレインのエピソードも印象深い。ちなみに、当時のヨーロッパではカルバン・クラインの知名度が低かったため、フランス版ではピエール・カルダン、スペイン版ではリーヴァイ・ストラウスに変更されるという逸話もあります。
キャスト・スタッフ
- 監督・共同脚本
- ロバート・ゼメキス:『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994)『コンタクト』(1997) など、数々の名作を手がける巨匠。
- 製作総指揮
- スティーブン・スピルバーグ:ゼメキスの師匠であり、映画界のレジェンド。
- フランク・マーシャル:『インディ・ジョーンズ』シリーズなどで知られる名プロデューサー。
- 音楽
- アラン・シルヴェストリ:『ロジャー・ラビット』(1988)『ボディガード』(1992)『アベンジャーズ』(2012)『レディ・プレイヤー1』(2018)など、大ヒット作を多数担当。
- キャスト
- マイケル・J・フォックス(マーティ・マクフライ役):「ファミリータイズ」(1982-1989)『ティーン・ウルフ』(1985)で注目を集めた実力派俳優。
- クリストファー・ロイド(エメット・ブラウン博士/ドク役):『ロジャー・ラビット』でおなじみの名優。
『 バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』(1989)

あらすじ
無事に1985年に帰還したマーティ。しかし、ジェニファーとのデートを計画していた矢先、未来から戻ったドクが現れる。ドクは、30年後の2015年で重大な問題が発生していると告げ、マーティとジェニファーを連れて再びタイムトラベル。そこに広がっていたのは、空飛ぶ車やホバーボードが行き交うテクノロジーに満ちた未来都市・2015年のヒル・バレーだった。
だが、未来ではマクフライ家に崩壊の危機が迫っていた。マーティとジェニファーの息子、マーティ・マクフライ・Jr.が窃盗容疑で逮捕されてしまったのだ。家族を救うため奔走するマーティたち。しかしその間に、老いたビフがタイムマシンの存在を知り、高校時代の自分にスポーツ年鑑を渡して賭博で財を成そうと目論む。この行為がさらなる混乱を招き、マクフライ家に壊滅的な影響を与える未来が生まれてしまう。
新たな危機に直面したマーティとドクは、ビフの野望を阻止するため、再び1955年に舞い戻り、歴史を修正するための戦いに挑むのだった。
魅力
『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の冒険舞台は、30年後の未来、2015年。ホバーボード、自動サイズ調整&乾燥機能付きジャケット、全自動サービングシステムなど、テクノロジーが飛躍的に進化した明るい未来都市が描かれ、当時の観客に夢とロマンを与えました。しかし、この未来の設定は当初の脚本案にはなく、1960年代を舞台にする予定だったとか。ゼメキス監督らは「タイムトラベルの続編なら普通ではできないことを」と考え、未来を舞台に変更しました。
また、PART2では映画技術も革新。1人の俳優が同一画面で2〜3人を演じる演出を可能にするため、ゼメキス監督は“ビスタグライド・システム”をVFX制作会社Industrial Light & Magic社に開発依頼。この技術により、マイケル・J・フォックスやクリストファー・ロイドによる1人多役が実現し、物語にさらなる深みを加えました。
未来描写を「ジョーク」として作ったと語るゼメキス監督ですが、現在ではいくつかが実現しています。たとえば、2016年に米Nikeが89足限定で発売した全自動紐靴は、劇中のものを再現したモデル。また、『ジョーズ 19』の3D映像で飛び出すサメは、3D映画やAR技術として現代に広がりました。
一方、劇中の象徴的な空飛ぶ車は、2024年代の今もまだ実現していません。公開当時“未来”だった2015年が過去となった今、未来像を振り返ること自体が新たな楽しみとなっています。
『 バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』(1990)

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あらすじ
1955年で危機を乗り越えたマーティとドク。しかし、ドクのデロリアンは大荒れの天候の中、雷に撃たれ1885年の西部開拓時代に飛ばされてしまう。2人は時代が離れ離れになった直後、マーティは1885年のドクから手紙を受け取る。ドクはクララという女性と幸せに過ごしており、1985年に戻るつもりはないという。ドクの気持ちを尊重したマーティは、1955年のドクの助けを借りて1985年に帰る決意を固める。しかし、2人はドクがビフの祖先であるビュフォード・タネンに撃たれて死ぬことを知り、マーティは西部開拓時代のドクを救うためにタイムトラベルを決意する。
マーティは、ドクが撃たれる1週間前に1885年に到着。ドクに事情を説明し、1985年に戻るよう説得する。しかし、ドクは崖に転落しそうなクララを救い、そのまま彼女と恋に落ちてしまう。一方、マーティは不運にもビュフォードに目をつけられ、1985年に帰る日、決闘を申し込まれてしまう。マーティとドクは決闘の前に元の時代に戻ろうと試みるが…。
魅力
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの完結編、PART3は予想外の舞台設定となる19世紀後半の西部開拓時代が舞台。なぜこの時代が選ばれたのかというと、マイケル・J・フォックスが打ち合わせでゼメキス監督に「どこに行きたい?」と聞かれ、彼が「西部開拓時代」と答えたことがきっかけだそう。この返答に監督が意気投合し、舞台が決定したという。
西部開拓時代のアメリカの風景は、既存のセットではなく、モニュメント・バレーで「1885年のヒル・バレー」の町を一から作り上げたという徹底ぶり。撮影時、マイケルは「監督の“アクション!”で、銃を持って通りに出るだけでワクワクした」と語っている。
また、PART3では、これまで科学に没頭していたドクに予期せぬ恋が訪れる。1885年で出会ったクララは、ドクの人生を大きく変える存在に。物語の終盤、ドクが戻ろうとする蒸気機関車にクララが追いつくシーンは、実際にクララ役のメアリー・スティーンバージェンが馬で疾走して撮影したというエピソードもある。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストでは、タイムトラベルによって未来が変わってしまったことを後悔しつつも、ドクが「未来は自分で作るのだ」と語り、物語は感動的に完結。ドクとマーティは最後の別れを交わし、物語は幕を閉じる。その後、ドク一家の冒険を描いたコミック『Back to the Future: Tales From the Time Train』が2018年に登場し、シリーズファンに新たなエピソードを届けている。
4作目が出る可能性は本当にないのか?
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の続編が製作されない理由は一言で言うと「製作陣に全くその気がないから」です。ロバート・ゼメキス監督と脚本家ボブ・ゲイルは、続編やリメイクの可能性について何度も否定しています。ゼメキス監督は「私とボブが生きている間は無理です」と語り、ゲイルは「続編を作りすぎて“やめておけば良かった”という映画をみんな見たことがあるでしょう」と述べています。
3部作が非常に素晴らしい作品であったため、製作陣はその価値を損ないたくないと考えているのでしょう。また、ゼメキス監督によれば、ユニバーサルはロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルの許可なしには続編やリメイクを作れないという契約が結ばれているとのことです。
公開されるとしたら10年以上はかかるかも
確かに、『バック・トゥ・ザ・フューチャー4』の公開は現時点では望み薄のようです。製作陣がシリーズの完璧さを守りたいという気持ち、そしてロバート・ゼメキス監督やボブ・ゲイルが続編やリメイクに消極的な理由も理解できます。彼らが語った「私とボブが生きている間は無理です」という言葉や、ユニバーサルとの契約によって続編やリメイクの製作は実現しづらい状況です。
とはいえ、映画の世界では何が起こるか分かりませんので、気長に待ちつつ、もしかしたら未来に何か新しい展開が訪れることを期待して楽しみにしているのも一つの楽しみ方かもしれませんね!
最後まで見てくださり、ありがとうございました!